「革新なくして、伝統なし」
「博多織」の歴史は実に780年あまり。
それぞれの時代に腕利きの職人たちが技術を磨き、人々に求められる最高の織物を創り続けてきた。
その積み重ねにより今日まで育まれてきた伝統的工芸品です。
伝統的工芸品とはいえ「博多織」は過去の摸倣品ではありません。
一方、近年では業界内外に「伝統的工芸品はかくあるべきだ」という定説が蔓延。
新しい織物を開発しても「こんなものは博多織ではない」といったお言葉を耳にします。
おそらく、昔の織り方で昔の柄を織ったものでないと、
伝統的工芸品とは認められない、という発想なのでしょう。
けれども残念なことに、伝統の言葉にとらわれすぎて、この数十年博多織業界で新しいものづくりへの開発が随分衰退してしまったようにも感じます。
では、伝統とは、いつの時代の話なのでしょうか。
たとえば300年前の職人は、700年前と同じ製法で同じ織物を織っていたでしょうか。
100年前、200年前の職人は、300年前の製法をそのまま真似ていたでしょうか。
いいえ、決してそうではありません。
私たちはこう思うのです。
伝統とは、革新の連続のうえに成り立つ礎であると。
自然の木々や山々に目を向けると、そこに昨日と同じ今日はありません。
明日はさらに違う風景になっているでしょう。
森羅万象、この世は少しずつですが、変化を繰り返しています。
博多織もまた然り。日々進化を遂げていたからこそ、長い歴史を紡いでこられました。
思えば、博多という都市は古くから国内外の文化が集まる商都です。
博多織の世界でも、先人たちは常に新しい考えや技術を取り入れ、開発、工夫や改良、発明を繰り返し、最高峰と呼ばれる織物を生み出してきました。
つまり、革新の積み重ねこそが伝統をつくるのです。
博多織の製造に携わる今、私たちは過去から本当に受け継ぐべきものは10%と考えます。
それは、先人に対する感謝の気持ちであり、博多織を愛していただける皆様への感謝の気持ち。
そして、最高の織物を織り続けるための技術と知識、
常に向上心を持って新しいものづくりにチャレンジを続ける精神です。
残りの90%は時代とともに見直し、変えていかなければなりません。
それは、古い商いの習慣や業界全体の体質、骨董品のような古い設備、和装業界から抜け出せない考え方です。
なぜなら、いつの時代でも、博多織は“最高”な高級織物であったのです。
新しくてお洒落、粋でカッコイイ。
いつの時代でも常に必要とされた“勝負”できる生地。
多くのお客様からそう思われ、求められてきたから博多織は生き抜いてこられた。
このニーズの本質を忘れてはいけません。
ライフスタイルの変化により、確かに着物を着る人は少なくなりました。
けれども、だから博多織が衰退したのではありません。
今の時代でも、革新への意欲を胸にチャレンジを続け、
時代が求める最高の織物を提供し続けられたなら、
きっと博多織の可能性はまだまだ広がる。
そして、博多織の真の伝統は次代へ受け継がれていく。
革新なくして、伝統なし。
この想いが博多織に明るい未来をもたらすのだと、
私たちサヌイ織物は確信しています。
HAKATA-ORI NEXT! サヌイ織物は、次のステージへ。
780年もの歴史を持つ博多織。しかし、作っているものは、古いものではありません。いつの時代も、そのライフスタイルに合わせ、革新を続けてきた結果、780年もの間、生き続けてきました。
ダーウィンの名言に「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」というあまりにも有名なものがあります。伝統的工芸品博多織も然り。
激流のようなスピードで変化する現代社会の中で、博多織もその流れに乗り、変わらなければ、明日はないかもしれない。いや、さらにその先へ行くべきでしょうか。
博多織は、帯だけではありません。現在ではその技術を活かし、さらに進化させ、マスク、ギフト製品、ネクタイ、自動車のパーツ、壁クロスなどの建築内装素材・・・も多く製造されるようになりました。しかし、いくら伝統的な織物だからと言っても、製法にその製品に適した変化と工夫がないと、ただ、「博多織の生地を使った粗悪品」にしかなりません。
例えば、マスク、ただ博多織の生地でマスクの形に仕立てただけでは、マスクという商品ではないと思います。洗えないとマスクとしては話になりません。だから、洗える博多織を作り出すことは必須条件。着け心地、息のしやすさ、耳が痛くないよう、素材選びからとものづくりの原点にもどり、開発を行う。試作を何度も何度も繰り返し、どんなに時間をかけても納得がいくものを作る。
壁のクロス生地、我が国の消防法で求められる防炎加工が施されなければ、使うことは許されません。防炎加工ができる素材で織り、日焼けによる変色が極力ないよう耐光性が強い織物を作らなければ、製品として成立しません。
自動車のパーツとしても、様々な耐性基準や自動車会社が求める生産力が伴わなければ、製品として使えません。
ネクタイでも、締めやすさ、緩まなさを、素材や糸の撚り具合、織物の設計レベルから改善し、製品としています。昨今では、サイズも様々で、幅や、長さ、さまざまなニーズに応えてこそ、製品といえるのではないでしょうか?
新しい製品を創るにあたって、それぞれの用途を研究し、必要とされている基準を乗り越える。そうでなければ、ただ、博多織を使っただけの、使う方の身になって考えていない粗悪品としかならないのではないでしょうか。博多織のメーカーが粗悪品を作るということは、今まで780年もの間、創意工夫と革新を続け、スーパーブランドの地位を確立してきた先達の方への裏切り行為となります。
激変する現代の中で、変わらなければならないものは、なにも博多織の製品だけではありません。製造環境、生産設備、物流環境も、流通環境も、注文システムも、在庫管理方法も、販売方法も、決済方法も、働き方という労務環境も・・・そして博多織を求めるお客様のニーズにもっと近づく、もっと寄り添う。
サヌイ織物は、博多織の技術を次の世代に伝えるため、時代に即した新しい博多織を創り出していきます。博多織は、素材として、時代の変化の中で多様化していくニーズにとことん向き合い、研究を重ね、経験という大切な時間を大いに使って、伝統という価値を、時代のニーズにマッチングする。1からものづくりをするメーカーにしか蓄えられない苦労と経験値、そのノウハウを、多様化する現代ニーズに当てはめる時は今だと思います。
さあ、博多織は、次のステージへ。
HAKATA‐ORI NEXT!